グローバル社会の市民論

 

 グローバル社会の進展により、各国の政治・経済活動、環境問題、利害関係は国境を越えるとともに、様々な情報は、否が応でも、地球レベルで人々を結びつけています。このような、連関性、相互作用、有限性を特徴とするグローバル社会の進行は、その反動(反作用)としての自民族中心主義的偏見を生み出すというリスクも内包しています。
 授業では、人間と社会を解析する多様な視点を紹介するとともに、私たちが無意識的に抱え込んでいる文化特性(認識や感情の枠組み:言語・習慣・経済至上主義的な意識や制度など)を相対化できる視点を紹介し、今後のみなさんが社会的事象を考える視点とキャリア選択に資する情報を提供します。
 具体的には、日本人の心的特性を色濃く反映した日本的な会社組織と、グローバルなWASP基準で設計されている外資企業の制度の比較などを通じて、私たちの文化特性を相対化できる視点を提供します。
 そのような考察を通して、これからの多元的なグローバル社会で様々な人々と共生していくための見識(センス)について、共に考えていきます。

東京電機大学で学ぶ

 この科目は、本学の新入生の皆さんに、工学やものづくりの面白さに触れ、工学の社会的意義を理解し、エンジニアの卵として自分の将来をイメージするとともに、大学での学びの意義に気づき、これからの大学での様々な学習に、目的意識を持って主体的に向かうマインドを育むことを目的として設置されています。
 また、教育・学習の手法として、単なる講義(講演)の受動的学習ではなく、以下のような構造化された能動的学習(アクティブラーニング)を行います。
①各テーマに関するテキストの読解と自分の考えをまとめたメモの作成(事前学習:個人思考)
②各テーマに関する講演の聴講とノートテイキング(傾聴しメモを取るスキル)
③学科横断的グループによる対話(オープンダイアローグ)(協同思考)
④対話内容の省察と学びの振り返り(事後学習:内省思考)
これらの一連の能動的学習により、これからの社会人に求められる批判的思考力、コミュニケーション力、文章表現力などの汎用的スキルの基礎を養成することも目的としています。

教育学特殊Ⅴ (慶応義塾大学 文学部 非常勤)

現代教育史の磁場を見つめる

 日本の教育現場(学校)は、常に批判的言説にさらされている。特に臨教審以降は、グローバル社会の進展への教育内容・方法の対応や、エリート人材育成への産業政策的関心の高まりの下で、国際比較データの公表(PISA、TIMSS)や特異な事件の発生の度に、印象レベルでマスコミが騒ぎ、世論を感情的に刺激し、高まる教育現場への批判に便乗して、新自由主義的政策が実施されるといった政治主導の教育政策立案の流れが定着している。
 現代社会の全ての「社会病理」があたかも「学校病理」に起因するかのように捉え、教育改革で全ての問題が解決できるという「改革幻想」に囚われ、日本の学校教育は、現場のニーズとは次元の異なる「教育の構造改革」という美名の下で以下のように翻弄されてきた。

1984年(昭和59年)臨時教育審議会設置 新自由主義・市場主義的教育改革の端緒
1998年(平成10年)学習指導要領改訂 授業時数の削減、総合学習の新設
2000年(平成12年)教育改革国民会議設置、校長資格要件弾力化、学校選択制
2006年(平成18年)教育基本法改正、郷土や国を愛する心、教員免許更新制の答申
2007年(平成19年)教育再生会議が「道徳の教科化」「武道必修」の提言
2008年(平成20年)学習指導要領改訂 30年ぶりに授業時数の増加
2014年(平成26年)教育再生実行会議が道徳の教科化を再提案
2016年(平成28年) 次期学習指導要領の方針(アクティブラーニングの推進)

 教育改革に影響を与える磁力(教育への潜在的要求)で強力なものが、経済界からの有能なエリート要請や新保守主義の愛国的人間の形成といった新自由主義・新保守主義的な成果主義的磁極である。対抗する磁極として、子どもの自由や学びの共同体といった協同的で民主的理念に基づいた地道な現場の取り組みもなされているが、米国流の市場原理、出口管理の教育改革の大合唱の前で、掻き消されそうに見える。
 教育の今を見据える時に、この磁場(制度設計に対する様々な教育理念の引力や斥力)の存在を無視しては、教育諸施策の本来の意味は、見えてこない。この授業では、現代の日本の教育諸施策を多角的に『見立て直し』、そこに働いている様々な力を析出したい。その多角的な考察を通して、「学校の今」を冷静に見つめる洞察力を身に付けることが、この科目の学習目標である。

教職入門

 「教職」は子どもたちと共に生活し、彼らの様々な学びを支援し、子どもたちの変容を見守り、その成長を自らの喜びとし、子どもたちとの相互作用(interaction)によって自らも成熟していく「きわめて人間的な仕事」です。また、教育の成否は、子どもたちに直接関わる教師の資質能力に負うところが極めて大きいといえます。それゆえ、教師には、次代を担う子どもたちが、その背中を追ってゆけるような実践的な指導力、専門的な知識、豊かな人間性が求められます。
 本科目は、教職を志す学生に教職の意義・教師の役割などに関して解説して、教職に関する理解を深めるとともに、「教育」という人間の営みの意味や価値を自覚的に問う事をとおして、教育者としての心構え、教師に求められる見識を身につけることを主な目的としています。

教育学概論

 学校教育をめぐる諸改革が盛んに議論され、あたかも「再生」しなければいけない「危機的状況」に学校があるかのような言説が、メディアに溢れています。
しかし、その教育批判の多くは、新しい時代状況を冷静に分析したものというよりも、単に過去を美化したものや、一部の成功者の事例を万人に求めるような乱暴なものなどを見られるのが現状です。
 とかく情緒的なものになりがちな教育批判に流されないためにも、「教育」の根本的な部分に立ち返って教育という営みの意味について再考する作業は、教師を目指す皆さんには、是非とも必要な作業です。みなさんの教育観を育み、それをより奥行きと広がりのあるものにするための「教育を考える足場(手がかり)」を皆さん一人ひとりがしっかりと考えていくことが、この授業の目的です。

教育課程論

 教師の最も大切な仕事は、「分る・身になる・楽しい授業」を生徒と共に創っていくことです。この授業実践力を高めるためには、教育課程編成の原理を理解し、授業に関わる学習指導計画の基本を習得する必要があります。
 また教育現場では、チーム学校の一員として、学校の教育目標の共通理解の下で、カリキュラム全体の重点化、効率化を図るカリキュラム・マネジメントが求められています。その意味では、教師一人ひとりに、学校全体の教育活動を俯瞰した上での、カリキュラムのデザイン力が求められる時代になっているといえるでしょう。
本科目では、カリキュラムの概念とその基本的知識を学ぶとともに、教育課程編成の具体的方法を学習します。さらに、最近の教育方法、教育評価法を中心に教授−学習の相互作用に注目した授業設計と教授方略を学ぶとともに、具体的な単元指導計画の作成、学習指導案作成などの各種演習を通して授業の構想力・実践力の習得を目指します。

道徳教育論

 本科目は、実践的な道徳の指導法を習得するために設置された教職課程科目です。特別な教科として道徳教育の意義や指導法について理解することが本科目の目的です。
 本科目では、日常的な私たちの行動を手がかりとして、「他者と共に、よりよい生き方を探究する道徳教育」について、様々な能動的で協働的な活動(アクティブラーニング)を通して共に学んでいきます。
 道徳はその自律的行使を人々の内なる声(良心)に期待せざるをえません。そのために道徳は各人によってとらえ方が異なり、社会的コンセンサスの形成が難しいと考えられがちです。教育では、このジレンマが「道徳は教えられるのか?」といった素朴な疑問として考えられます。
 本講義では、この疑問を真摯に受けとめた上で、価値観の多様化が顕在化しているグローバル社会におけるこれからの道徳教育の在り方を、みなさんと共に考えていきます。

 道徳教育は、教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神を踏まえ、自己の生き方や人間としての生き方を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を育成する教育活動です。
 「道徳の意義や原理等を踏まえ、学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育及びその要となる道徳科の目標や内容、指導計画等を理解するとともに、教材研究や学習指導案の作成、模擬授業等を通して、実践的な指導力を身に付けていること」を全体目標とします。

人間科学プロジェクト

 本科目は、人間科学の諸分野の学習をさらに深めたい学生、様々な現実的な課題に自ら取り組んでみようという積極性のある学生のために設けられている課題解決型のプロジェクト科目です。
 人間科学系列教員の直接指導のもとに、個別のテーマについて調査、発表、討論、レポート作成などを通じて、知識の修得とともに調査研究やプレゼンテーションの能力、批判的思考能力や課題解決能力を養成することを目的としています。
 つまり、様々な知識や技能を活用し、具体的な課題を解決できる実践的な力(コンピテンシー)の獲得を目的としてデザインされたPBL(プロジェクト型)科目です。
 少人数による演習ですので、専門科目のみならず、幅広い教養や様々な事に挑戦できる実践力を身につけようという意欲のある学生を想定して設計された科目です。

 これからの社会を担う若者に求められる資質として、「主体的で自律的な実行力」「課題を発見し、創造的に取り組む思考力」「多様な人々と対話し協調する力」」などがあげられます。
 本科目では、自らの関心に応じてテーマを選択し、問題意識をもって主体的にプロジェクト取り組むことが要求されます。自らが興味・関心のある課題(プロジェクト)に仲間とともに深く関わり、情報収集、文献調査、ディスカッション、プレゼンテーション、レポート作成等の自律的学習活動を通じて、様々なコンピテンシーを高めることを目標としています。学生の皆さんは、下記の達成目標を意識して、学習に取り組んでください。

1.      課題(テーマ)の設定や活動計画の立案に自律的・協調的に取り組める。
2.      調査研究、資料収集、データ分析を適切なかたちで主体的に行える。
3.      根拠に基づく、合理的で説得力のある解決策(仮説)を提案できる。
4.      聞き手が理解しやすく、メッセージが伝わる発表(プレゼンテーション)ができる。 
5.  学習活動(プロジェクト)全体をPDCAの観点から自己評価し、自律的に調整できる。

教育実習セミナー

 教育実習を行うためには「事前.事後指導」の受講が必修になっており、この科目は、中・高等学校における教育実習の事前・事後指導として開講される演習科目です。事前指導として、春季に集中授業を行い、事後指導として夏季に集中授業を行います。
 春の事前指導では、実習生としての心構えや、生徒理解および指導上の留意点、教材研究や授業運営の最終的な準備の指針等につき学習すると共に、学習指導案の作成や模擬授業により、実際の授業力を高めることを目標としています。
 また、夏の事後指導では、学校現場での実習経験で得られた知見の定着を目指して各自の実習の報告や班別の教育テーマ別の討論を行い、教師としての必要な資質の理解を深めることを目標としています。

教育実習Ⅰ、Ⅱ

 教員免許状を取得するには、「教育実習」が必修です。「教育実習」は現実の学校教育の場で、今まで学習してきた教育理論や専門知識を基礎として主体的な教育体験をもち、そのことによって教育者としての力量を高め、また、教育者としての使命感や責任感を育むことを目指すものです。 生徒にとっては、実習生といえども「先生」であることを常に念頭において、学生諸君は2週間という限られた実習期間を可能な限り充実したものにするためにも、「教職の基本」の修得に励んでもらいたいと思います。
 教育実習の中心である「実習校での実務」は、生徒の教科の学習や、文化・スポーツなどの課外活動を支援する教師としての役割を体験し、学校という社会的制度の課題を認識するなど、公教育に関して実践的・多面的に学ぶことを目的とするものです。そしてこの現場実習を通じて、教職課程履修者みずから、教師としての適性を判断したり、さらに教職を志望してゆく上での課題をつかんだりすることも大切な学習目標です。

介護等体験特論

 本格的少子高齢社会を迎え、またノーマライゼーションの実現が目指される21世紀においては、様々な人々と共生していくための知識や技能、見識が求められます。 また現在、中学校教育職員免許状を取得するには、盲・ろう・養護などの特別支援諸学校で2日間、社会福祉施設で5日間の計7日間の介護等体験が法によって義務付けられています。 本科目は、多様な人々との交流や高齢者・障害者の介護を通じて、教師を志望する若者に要請されるより幅広い社会的視野を持った人材育成を目指す「介護等体験」をより安全かつ充実したものにするために、その事前・事後の指導として設けられた科目です。
 現場で働いている介護福祉士の講演や、養護学校教諭の指導を通して、現場での実際を知るとともに、すでに介護等体験を行った上級生とのコミュニケーションを通じて、高齢者や障害を持っている方々にとって安全かつ、充実した体験への姿勢を培ってもらいます。

卒業研究  

 教師教育の研究